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2012年9月11日 (火)

ニセ医者事件に思う

東京都板橋区で健康診断を行っていた医師が、ニセ医者(なりすまし医師)だと分かったそうです。医師は現在行方不明だそうですが、所在が判明すれば医師法違反などの罪に問われることになるでしょう。

このニュースを聞いて思い出したのが、ニセ弁護士事件です。かつて私が赴任していた地域の管内で、弁護士と名乗って法律相談を受けたり、登記業務を行っている人がいるという情報が寄せられたため、弁護士会から調査を命じられたことがありました。聞き取り調査を行ってみると、たしかに弁護士という肩書きの名刺があり、手作りの権利証が作られていました。しかも、このニセ弁護士、この件だけでなく他にも相談を受けており、周囲から「先生」と呼ばれているというのです。

私は驚いて、「弁護士になりすまして、法律相談を受けたり、法律業務を行うのは犯罪ですよ」と言いました。ところが、この相談者は「先生にはお世話になったから、告発するようなことはしたくない。権利証が本物かどうかが分かれば、それでよかったのだ」といいます。他の人からも聞き取りをしましたが、みなさん、「先生」に感謝の言葉を述べるのです。

いくら弁護士が少ない地域と言っても、騙されたわけですから怒ってもいいはずです。なぜでしょうか。ここで私は、評判の悪いニセ医者はいない、という言葉を思い出しました。ニセ医者は自分がニセモノだと分かっていますから、ばれないように振る舞います。親切に話を聞いて、相談に乗ってあげます。患者は喜んで帰りますから、なかなかニセ医者だと発覚しません。ニセ弁護士にも、これと同じ問題があるのだと気づいたのです。

もちろん、健康診断といえども、異常が見つかれば早期に治療を受けなければ命を失うことさえ、ないとは言えません。弁護士の場合も同じで、法律相談で話を聞いて終わることもありますが、すぐに着手しなければ時効になってしまうなどして、大事な財産や権利を失ってしまう可能性があります。だからもそ、ニセ医者、ニセ弁護士は厳しく取り締まる必要があるわけです。

しかし、こうしたニセ医者、ニセ弁護士のニュースをを聞くたびに、本物の医師や弁護士の方も、もっと改善の余地があるのではないかとも考えさせられます。ニセ弁護士が必要とされるニーズがあるということは、本物の弁護士に相談するべき問題が相談されていない、ということです。私も「先生にはお世話になったから」と口々に感謝されるような本物の弁護士になりたいものです。

(田岡)

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コメント


田岡先生へ
ニセ医者事件について思うところを一応ホンモノの医者が書きます。

以前にも「ケイオウ卒」を語る医者が多摩地区の病院で働いていたニセ医者事件がありました。被災地でもニセ医者騒ぎがありました。

ニセ医者が通用する物理的な原因には、医師免許証が小学校の卒業証書の様な大きな紙に仰々しく印刷された書式で普段持ち歩けない点があります。だからコピーして病院に提出する形になるのでニセ医者をやりやすいのかもしれません。銀行カードや運転免許証の様な小さなIDカード形式にして医師本人が持ち歩く方式がホンモノの医者からも求められています。

次に、ニセ医者は患者に評判が良い原則ですが、確かにニセ医者事件が起きても通院していた患者は口々にニセ医者を「いい先生だった」と言うのはホンモノ医者としても傾聴に値します。つまりニセ医者はホンモノ医者よりも患者に親切で態度が良いのです。

ここで、医者の果たすべき役割には、患者を適切に治療する専門家の側面と、患者に安心感を与えて不快感を感じさせない人間性の側面があり、例え医師としての能力技術が高くとも、患者を実験動物の様に扱う医者は嫌われます。
 
究極の選択で、外科手術を受ける際に、手術は上手いが人間性に問題がある外科医と、人間性はすばらしいが手術は下手な外科医のどちらの手術を受けたいか?という話しがありますが、私は後者です。どんなに技術が高くとも人間性に問題があり人の道を外れた医者の手を借りてまで、生き長らえたいとは思いません。たとえ死すとも悪魔の手は借りずとでも言いましょうか。多くの医者はこの立場なので早死にします。

もちろん、人間性と医療技術の両方を併せ持つ医者が最高の名医と言えますが、ホンモノ医者の世界にもその様な名医はなかなかおりません。人間性も医療技術も中くらいの医者が大多数だと思います。
患者からは医療技術は見えにくいので、人間性の高い様に見えるニセ医者の存在は輝くのだろうとも思います。ホンモノ医者もニセ医者の人気を見習い医学的治療とともに患者を人間として重視することを意識して診療する態度が必要だと思います。

さらに、ホンモノの医者が態度の悪いもう一つの原因には、大病院では医者は給料制なので患者が増えても給料が上がらないという側面もあります。態度を悪くして患者が減る方が仕事が楽になるという悪循環もあるのです。その様な態度の悪い医者が個人で開業したとたんに手のひらを返したように親切な名医に変わることがあります。開業医では来た患者の数が収入に直結するので。つまりは心がけ次第で簡単に患者に感じの良い名医になれるのに大病院では必要ないので多くの医者は怠っているとも言えるのだと思います。


ニセ弁護士の問題で思い出すのは、先週のテレビ番組で見た横須賀の「よろず相談センター」です。
相談員はニセ弁護士ではないのですが、借金や自己破産についてアドバイスを与えたり簡易裁判所まで付き添ったりしています。費用を取っていないのでいわゆる非弁行為には当たらないのですが、これは本来、司法書士や弁護士の様な法律家が拘るべきではないだろうか?と思いました。
さらに相談員は不眠や鬱などの相談者の話し相手などもしており、これは精神科医が行うべき相談だと思いました。
高齢の相談員が親身に相談者の話しを聞く様子を見ていると、ホンモノ医者の私も不眠の悩みを聞いて欲しいと思うほどに親近感を感じました。相談員のお爺さんなら睡眠薬では治らない不眠の原因も治療して下さる様にすら感じたのです。

そこで、なぜこの相談員は人気があるのだろうか?と考えました。

おそらく本来相談すべき法律家や精神科医は、接し難く恐いし、相談のために精神科や法律事務所に出入りすると、ご近所や親戚にも偏見の目で見られる可能性すらあります。「あのひと精神科に行っているんですって!」
「あのひと法律事務所に相談してサイバンを起こすらしいよ!」のような偏見が日本の風土には根強くあるのかもしれません。

医者も弁護士も普通の人を助けたいと思っているにちがいありません。そういう職業ですから。
ところが一般の人にとって専門家は「なんだかこわい」「ちかづきにくい」し、きっと一般人を馬鹿にしているにちがいないから、親切な近所のおじさんの方が安心して相談できる。それがニセ医者やニセ弁護士であったとしてもかまわない様な心理があるのかもしれません。

ホンモノ医者としては、そんな専門家を怖がる人たちにも気に入られて専門家として助けていける存在にならなければならないのだろうと強く感じるのです。

ホンモノ医者さん

コメントに気付くのが遅くなり,失礼しました。「たとえ死すとも悪魔の手は借りず」との言は,示唆的ですね。よき医師,よき弁護士である前にまずはよき人間であれ,という戒めの言葉としたいと思います。ありがとうございました。

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