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活動報告

2014年2月27日 (木)

カネミ油症新認定訴訟控訴審の結果から

平成20年8月に、カネミ油症新認定訴訟を福岡地裁小倉支部に提起して5年と半年が経ちました。平成25年3月に1審敗訴の判決があり、本日再び福岡高裁(控訴審)で敗訴判決が出されました。敗訴理由は、1審と全く同じ、除斥期間の経過によるものです。

つまり、概要としては、カネミ油症はじん肺訴訟の様な進行性のものである、あるいは水俣病の様な潜伏性のものであるという証明が科学的に為されていない。ゆえに、除斥期間の起算点を遅らせることはできない。油症認定されなければ提訴が難しかったことは認めるが、それは「事実上の障害」に過ぎないというものです。

しかし、じん肺訴訟でも水俣病訴訟でも、最高裁が除斥期間の起算点を遅らせたのは、まさに「訴訟提起できるだけの症状が現れたときには除斥期間が経過していたという事実上の提訴の困難」があったがゆえであり、法は不可能を求めるものではないことからこのような決断が下されたものです。

カネミ油症は、症状の大半が非特異(他の病気と区別がつくような特徴的な症状を呈さない)であるため、血中濃度を測って未だ高濃度のダイオキシン類が体内に残留しているということが明らかにならなければ、その体調不良を油症ゆえと判断することができない病気です。油症認定されるまで、患者に現れている症状は油症によるものであるとはわからないため、症状が油症であると覚知されるには認定が不可欠なのであり、訴訟提起できるようになったときには除斥期間が経過していたというのは、じん肺や水俣病と何ら構造的に変わりがないものであって、裁判所が「事実上の障害」という言葉ひとつで原告の主張を排斥したのは、何の説明にもなっていないのです。

カネミ油症は、進行性のものであるとも潜伏性のものであるとも証明できないかもしれませんが、体内に残るダイオキシン類ゆえに、継続して今も様々な病状を発生させ続けていることは明らかです。損害が日々新たに発生しているのに、20年が経過したら損害を請求できなくなるというのは問題です。この理論は、例えば最近の事例で言えば、原発事故で避難を継続していて日々損害が発生し続けていたとしても、一定期間を経過すればその損害は請求できなくなるということだからです。

今日、原告団の1人の人は、こう言いました。「私の子どもは油症事件から20年と半年後に生まれました。私の子どもは油症であるにも拘らず、生まれたときには既に除斥期間という名のもとに提訴権を失っていたということになります。これこそが、文字通り本人に帰責性のない提訴不可能というものではないですか?」
また、この5年半の内に、5名もの原告が仲間に希望を託して他界しました。
このような不当判決を維持させてはなりません。

(石丸文佳)


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2013年11月27日 (水)

岩内ひまわり基金法律事務所引継式

少し、時期遅れではありますが・・・、当事務所の古宮靖子弁護士が、北海道の札幌から100キロほど西の岩内という場所に開設されている岩内ひまわり基金法律事務所の新しい所長として赴任いたしました。そして、当事務所の弁護士5名が、11月11日(月)に行われた引き継ぎ式に参加しました。

 季節外れの大雪にも関わらず、町長、町議会議長の方々、札幌弁護士会の弁護士の方々が大勢参加して、盛大な式が行われました。

 引継式の前には、記者会見も行われ、翌日の新聞には、カラーで、大きく記事として取り上げていただき、期待のほどが伺われました。

 当事務所に入所してきたときの古宮弁護士は、初々しい新人という名にふさわしいかわいらしさの漂う女性でしたが、引継式で堂々と挨拶する姿は、もう立派な一人前の弁護士となっており、事件や環境が人を育てるということを実感して来ました。

 岩内は、人口1万5000人余りの岩内町と周りの海岸沿いの地域を含むそれほど大きな管轄区域ではありませんが、ここから、多くの弁護士がいる札幌までは、車で2時間ほどの距離があり、冬には、道路の氷結と吹雪に阻まれ、容易に弁護士にアクセスできる環境ではありません。

 そこに、なんとか法的支援を行き届かせたいとの札幌弁護士会を始め弁護士達の思いがこの岩内ひまわり基金法律事務所に結実しています。

 弁護士なんか必要ないと思っておられる方々ともうちょっと早く弁護士に相談してくれていたら、こんなにこじれなかったのに、とか、ちょっと手続きをしておけば、問題は起きなかったのに、と口惜しい思いをしている弁護士たちとの間には、ギャップがあります。

岩内の皆さん、
「弁護士に相談してみるということが、気軽にできるように、頑張ります。」
「なぜか、私の人生の節目には、いつも雪が降るのです。」と明るく笑う古宮靖子弁護士を、どうぞよろしくお願いいたします。

(神山昌子)


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2013年11月26日 (火)

東日本大震災,復興用地確保に特例案

タイトル:東日本大震災,復興用地確保に特例案

弁護士の仕事といえば,多くの方は「裁判」を思い浮かべられると思います。
しかし,実は多くの弁護士は様々な公益活動に取り組んでおり,特に,桜丘法律事務所の弁護士は公益活動に精力的に取り組んでいます。

平成25年10月まで東日本大震災の被災地である岩手県宮古市で執務していた私が,この3,4か月間特に力を注いできた公益活動の一つが,このたび大きく報道されましたので報告させていただきます。

◆復興用確保へ特例案 迅速化に向け県などが国に要望 (岩手日報)
 http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20131126_3

◆土地取得、特例措置要望へ 復興へ手続き迅速化 岩手県(河北新報)
 http://www.kahoku.co.jp/news/2013/11/20131126t31012.htm

◆復興用地確保に特例案 岩手県 着工、半年程度に短縮 (産経)
 http://sankei.jp.msn.com/region/news/131126/iwt13112602250000-n1.htm

◆用地確保で県などが“具体案”(NHK盛岡放送局) ※動画もあります。
 http://www3.nhk.or.jp/lnews/morioka/6043278101.html?t=1385373202854

この動きは,東日本大震災の復興にまつわる動きです。被災地の自治体は町を復興するため,高台の土地や堤防の土地など,多くの土地を確保しなければなりませんが,これがうまくいっていません。確保しようとした土地の多くが,例えば相続手続きが済んでいなかったり,あるいは行方不明の方がいたり,あるいは土地の境界が不明だったりという状態だったからです。

この現状を解消するため,岩手県が岩手弁護士会に研究を持ちかける形で,両者共同で復興用地確保の新制度を提言することになり,多数回の意見交換を重ねた上で,上記の記者発表に辿り着きました。

今後は政府や国会議員にこの制度を丁寧に説明して周り,国会で無事可決されるために力を注ぐことになるのですが,こういった俗に言う「ロビー活動」も,弁護士の活動と無縁なものではありませんので,引き続き力を注いでいきたいと思います。
(小口幸人(おぐちゆきひと))

※国会議員のみなさま,また報道関係のみなさま,東京にいる人の中でこの研究成果に一番詳しいのは,恐らく私ですので,いつでもお声がけ下さい。誠心誠意対応させていただきます。

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2013年5月27日 (月)

浪江町の今

5月11日(土),浪江町復興支援弁護団の一員として,福島県双葉郡浪江町の現地調査に行ってきました。そこで,現地調査の様子をお伝えしたいと思います。

さて,みなさんは浪江町がどんなところかご存知でしょうか。
DASH村が存在していた,とっても自然が豊かな場所です。そして,原発の被害が大きかった場所でもあります。

浪江町の大部分は,帰還困難区域に指定されています。
帰還困難区域とは,「5年間を経過してもなお、年間積算線量が20ミリシーベルトを下回らないおそれのある、現時点で年間積算線量が50ミリシーベルト超の地域」です。つまり,人が住むことのできない地域です。
午前9時30分,郡山駅から浪江町の方が運転してくださるバスに乗って出発。浪江町まではバスで約2時間かかります。

私たちは,放射線量計とにらめっこしながらずんずんと浪江町に向かっていきました。

 浪江町に入ると,除染作業の様子が目に飛び込んできました。黒いビニール様の大きな袋に,高い放射線量を含む土や草木が入れられていました。空き地には,その黒い大きな袋が山積みになっています。民家の隣にもその黒い袋は置かれていました。物々しい空気が漂っていました。

そして,いよいよ帰還困難区域に。入口にはゲートが設置されており,警察官が常駐し,私たちは身分証の提示を求められました。浪江町の方は,「自分の町に入るのに,どうして身分証を見せなければいけないのだろう。言いようのない寂しさがこみ上げてくる。」とおっしゃっていました。自分の故郷が失われた喪失感はどれほどのものでしょうか。言葉にできない悔しさや悲しみが私たちにも伝わってきました。

 帰還困難区域に入ってからのレポートは,さらに続きます。

(國松里美)

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2013年3月 7日 (木)

カネミ油症新認定訴訟・原告団の声明

弁護士の石丸です。

以前、このブログで、皆さんに「カネミ油症新認定訴訟」という裁判が、事件が起きてから40年以上経った今でも行われていること、そしてその1審判決が間近であることをご報告しました。
過日、裁判所から和解案が示されました。それは、事実上原告1人あたり30万円の解決金で和解せよという内容でした。

40年以上も病気のデパートと呼ばれるほどの苦しみを負って生きてきた原告らにとって、あまりにも無理解極まる裁判所の和解案に対し、原告団から声明文が出ているので、本日はこの場を借りて、原告団の声を紹介したいと思います。

和解案に対する原告団声明(一部抜粋)

2008年5月23日に提訴してから5年、最後の最後に、まさかこのように情けない和解案を裁判所から突きつけられることになるとは、未だに信じられない思いでいっぱいです。
新聞報道により、これまでの協議の中で、カネミ倉庫側からの和解案の提示額が10万円であったことを知った時、何と原告をバカにしているのかと思いましたが、今回の裁判所の和解案もそれと同じく、私たち原告をバカにしている、愚弄しているとしか言いようがありません。
裁判長は、私たちのこれまで味わってきた経済的、肉体的、精神的な痛み、苦しみ、悲しみに対する対価が30万円などという金額で済まされるものだと考えているのでしょうか。なぜ旧原告らが受けることのできた最低限の補償を私たちには必要がないと考えたのでしょうか。裁判長は、真実、私たち新認定患者は、旧認定患者と比べて症状の程度が軽いと思われているのでしょうか。
2月19日に五島の原告が亡くなりました。彼で4人目です。無念の思いを抱えて亡くなっていった仲間にどのように報告すればよいのか、情けなさでいっぱいです。
私も含めて、命がけでこれまで本訴訟を戦ってきた原告らが、今、感じているのは、怒りと絶望感とそして情けなさです。
未だに未認定である私の子供らを含め、何の補償も、救済も受けていない被害者らが多数存在する現実を考えれば、このまま私たちがこのような貧弱な内容の和解案を受け入れることは絶対にできません。
いつもご支援くださる皆様、どうか、今後とも新認定訴訟原告らの実情をご理解の上ご支援を賜りますようお願い申し上げます。

平成25年2月21日 原告団団長 古木 武次


(石丸文佳)

2013年1月29日 (火)

カネミ油症新認定訴訟

現在、カネミ油症新認定訴訟という裁判が福岡地裁小倉支部で行われています。

カネミ油症事件という大事件が、昭和43年に起きました。カネミ倉庫株式会社が作った食用油にダイオキシン類が混入していたことで、西日本を中心に多数の中毒患者を出した事件です。

カネミ油を摂取した者には、初期段階では皮膚に吹き出物が出たり、爪や歯の変形・変色するといった症状が典型的に見られます。このあたりの症状を中心として、当初は患者を認定する基準が作られました。

しかし、ダイオキシン類の摂取は、遺伝子レベルに影響を及ぼすため、油を直接摂取していない二世三世にも影響すると言われています。また、ダイオキシン類は体外に排出されにくいため、長年悪影響を与え続け、長期的には「病気のデパート」と言われるほど多様な症状を呈するようになります。

つまり、初期の認定基準は患者の全ての症状をカバーできていなかったために、患者として認定されないまま、多くの者が放置されてきたのです。

そこで、平成16年、ダイオキシン類の血中濃度という新しい基準が加えられました。これにより、新たに患者として認定された人たちが出ました。これが、新認定患者と呼ばれる人たちです。

旧認定患者の多くは、多数の集団訴訟に原告として加わったことで多少の賠償金を手にしたものの、新認定患者はこれまで患者としてすら認められてこなかった人たちです。当然、かつて旧認定患者が起こした訴訟に加わることはできませんでした。それが、平成16年以降の新認定基準によって患者として認定されたことで、ようやく彼らは賠償請求を行うことができるようになったわけです。

しかし、現在の訴訟において、被告カネミ倉庫は「除斥期間」を主張してきています。除斥期間とは、ある請求を行うに当たって設けられている時間制限のことで、不法行為に基づく損害賠償請求を起こすことができる期間は、民法上、不法行為時から20年とされています。

ところが、新認定患者は、事件発生から優に20年以上、患者として認められてきませんでした。にもかかわらず、20年以内に訴訟を起こしていないからあなたたちには何ら救済を与えることはできませんと加害企業は答弁しているのです。こんな不合理なことがあるでしょうか。
先日の和解のための協議期日では、カネミ倉庫は1人10万円程度なら支払ってもよいと回答したそうです。

何ら落ち度なく、ただ油を使った料理を食べただけで、あらゆる病気にかかり、病院に行っても原因が分からないと言われてただ苦しむ毎日。病院代ばかりが嵩み、満足に働くこともできずに困窮し、結婚しても出産した子にも症状が現れるのではないかと苦悩し、子どもを生んでも生まなくても辛い。同じ油を食べた家族の中でも認定される者とされない者が出て、誰に認定されなくとも己はこの苦しみが毒油からくるものだと知っているのに、40年以上見捨てられてきた人々。

それなのに、事件から20年以上が経過したので加害企業は一切法的義務を負うことはないという結論でよいのでしょうか。こんなに苦しめられてきた人生の結論が、10万円の賠償で済まされてもよいのでしょうか。

除斥期間の主張は、水俣病やじん肺の訴訟等でかつても主張され、排斥されてきたという事実があります。
いずれも、加害者に除斥期間の主張を許すのはあまりに社会正義に反すると思われた事件です。世論が、加害者の逃げを許さなかったのです。

ブログを読んでいただいている皆さんにお願いします。カネミ油症を、終わった事件と思わないでください。今も患者の苦しみは続いています。二世三世の問題もあります。加害企業の逃げを、許さないでほしいのです。
訴訟に対する応援を期待します。

(石丸文佳)

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2012年11月19日 (月)

法律相談会@介護老人保健施設

 先日,杉並区にある介護老人保健施設(ステイ及びデイケア対応)で開かれた施設の地域交流会に参加させていただきました。施設利用者の方,施設利用者のご家族の方,地域の方を対象にした文化祭のようなイベントで,会場には特殊な用具を装着しての高齢者体験コーナー,リハビリ専門職による体力測定コーナー,栄養食試食会など,介護老人保健施ならではというブースが多数設けられていました。私たち桜丘法律事務所も,そこに法律相談のブースを出させていただいたというわけです。

ブースを出していたのは2時間半程度の短い時間でしたが,1人の相談が終わると次の相談者が見えられるというような状態で,私たちのブースも他のブースに負けず劣らずなかなか盛況でした。介護老人保健施設での相談会なので,成年後見等に関係する相談が多いのかなと単純に考えていたのですが,実際には,賃貸借に関する相談や,隣人トラブルの相談等,普段の生活一般に関する相談が多かったように思います。
 
帰り際,私も,高齢者体験をさせていただきました。ゴーグルで視野を制限し,特殊なスーツとバンドで関節の稼働領域を制限すると,地面とその少し上のごく狭い範囲を見ながら前のめりになって歩くような形になります。イヤーマフをつけると,周りの音も良く聞こえません。高齢者の身体になって,初めて知りました。歩くだけでこんなに大変なんだということを。ましてや,法律事務所まで歩いて行くのは,本当に大変なことなのだろうと思いました。やはり,私たち弁護士は,事務所で待っているだけではいけないと思いました。介護老人保健施設と法律事務所が協力することで,健康問題だけでなく法律問題も気軽に相談できる環境を整えていけたらと思いました。

(鏑木)

2012年11月 7日 (水)

市民後見人

この秋から,渋谷区成年後見支援センター「成年後見活用促進ネッワーク市民後見人養成事業専門部会」の委員に就任しました。

「市民後見人」とは,要するに親族でもなく,また弁護士や司法書士などの資格を持つわけではないが,成年後見人として活動する意欲と能力のある人のことをいいます。もちろん家庭裁判所から正式に後見人として選任されるまではあくまでも「候補者」ということになります。

平成24年4月施行の改正老人福祉法32条の2では,市町村が主体となって後見人を確保するための取組みをしなければならないという努力義務が規定されました。具体的には,市町村には,市民後見人を確保するための研修の実施,後見等の業務を適正に行うことができる者の家庭裁判所への推薦等をすることが求められます。
この候補者を養成する事業を渋谷区でも本格的に始めたということです。

 現在,日本は国民の5人に1人が高齢者(65歳以上)という高齢社会を迎えています。今後もさらに高齢者の割合が高まり,今以上に多くの人が認知症等で成年後見制度を利用する可能性があります。一方で,少子化の進行,家族の分散化等により,親族以外の者が後見人にならざるを得ないというケースの割合も高くなると思われます。

 最高裁判所が公表している「成年後見関係事件の概況-平成23年1月~12月-」によれば,親族が選任されたのが約55.6%(中でも子が圧倒的に多い)であり,親族以外では司法書士,弁護士,社会福祉士などの専門家が多く選任されています。現在はこれらの人で成年後見人をほぼ担っている状況です。

 しかし,将来的にはどうでしょう。現在ですら,親族といえども元々ほとんど接触がない,関わりたくない,面倒なことはやりたくないという人は珍しくありません。このような場合,家庭裁判所は,親族に無理に委ねることはせず,一般的には専門職団体に推薦を求めるなどして,専門家から選任しています。

 ただ,後見申立件数がさらに増大したときに専門家だけで十分に対応できるかというと地域によっては不安もあります。また,必ずしも法的な紛争があるわけではなく,見守り的な身上監護にこそ重点が置かれるべきケースについては専門家よりもむしろ近くに住んでいてかつ信頼できるという人こそが後見人にふさわしいということもあります。

このような事情から市民後見人を養成する事業が数年前から既に各地で行われています。

 上記最高裁の統計によれば平成23年は92人の市民後見人が選任されたとのことです。
前年の統計には「市民後見人」というカテゴリーはありませんでした(おそらく「その他」に入っていたのでしょう)。いよいよ社会的に認知されるようになってきたということかもしれません。

 ただ,社会貢献の意欲と後見業務に関する能力を備えた方を市民後見人候補者として確保するのは容易ではありません。被後見人の立場からすれば,見ず知らずの他人が財産管理・身上監護の権限を持つことになりますが,後見制度の十分な理解と知識がない人が選任されたのでは困るわけです。

 そういう意味で,いよいよ本格化する各地での養成事業は大変重要といえます。市民後見人が普及するためには様々な検討課題がありますが,多くの市民が成年後見制度に関心を持ち,我々専門家とともに支える側になってくれたらと思います。

(亀井)

2012年10月19日 (金)

はるえの活動日記(その3)

(昨日から続きます)
ただ、どれだけ意識を鋭敏にしたとしても虐待は起こります。誠実に仕事に取り組む限り善意に基づく虐待と正当な業務行為との線引きの難しい事態に直面することは避けられません。

もっとも、間違いが生じること自体は多くの場合さほど大した問題ではありません。間違いを犯しても、他の人や組織から指摘された時に直せば問題はありません。重要なのは同じ誤りを繰り返さないことです。気にしなければならないのは、間違いをチェックする仕組みが機能しているかどうかです。この点で問題がないのであれば、組織としては健全だと言って差し支えありません。

 そうした意味で今後の障害者福祉施設には所内研修の実施だけではなく通報の所内窓口に外部の目を入れることが極めて重要だと思いました。組織・団体は同じ価値観を共有する人材で占められがちです。自分達のしていることに違和感がもたれにくい素地があります。

虐待を通報するにあたっては、緊急性が認められる案件でない限り基本的には所内で事実確認をした上で市町村への報告を行うのが適切だと思いますが、所内の確認部局に外部の者を入れておくことは問題の潜在化を防ぐための選択肢の一つです。こうした領域でも弁護士は一定の役割を果たすことができるのではないかと思いました。

 虐待を発見した人がどのような行動をとったら良いかにも触れておきます。上述のとおり、所内通報窓口がある場合にはその部署へ、それがない場合には所長に連絡して適切な対応を促すのが良いと思います。そこで問題が隠蔽された時に初めて市町村に直接通報すれば良いでしょう。ただし、物理的な暴行の場面を目撃した時など緊急性の高い場面では、直ちに市町村等に通報する必要があります。

虐待の通報を受けた施設の責任者は、根も葉もない風聞であった場合を除き、事実関係を整理した上で速やかに市町村に報告しておくべきです。広く情報を提供しておいた方がリスク管理上望ましいのは間違いありません。あらぬ疑いをかけられて行政から調査が入った場合でも、利用者から寄せられた虐待情報を定期的に市町村に報告していれば問題がないことの説明がし易くなります。

実際に虐待が存在した場合でも事実関係を隠蔽したという誹りを避けられ、建設的な話合いをすることに繋がります。更に言えば、自分達のしていることが行政から見ても適切と言えるのかを常に確認しながら施設を運営していれば、そもそも致命的な誤りは起こり得ないとも思われます。

(師子角)

2012年10月18日 (木)

はるえの活動日記(その2)

(昨日から続きます)
 障害者の人権が守られなければならないことは当然ですが、虐待と誹られることを怖れて職員が萎縮してしまうことも問題です。法制定に反対していた人の危惧は萎縮的な効果を念頭に置いたものだと思います。

 しかし、障害者虐待防止法は問題を潜在化させないことを念頭に置いた法律であるため、施設職員の方が萎縮する必要はありません。

 極めて大雑把に言うと、障害者虐待防止法は、①虐待を受けたと「思われる」障害者の発見→②市町村への通報→③問題があれば改善のための措置をとる、という構造の法律です。判別が難しいため、虐待が疑われるものがあれば取り敢えず問題を顕在化させよう、その上で本当に問題なのかを議論して行こうという法律です。虐待をした人を吊し上げるための法律ではありません。罰則も守秘義務に違反した場合や、役所による調査を妨害した場合にのみ規定されています。議論が積み重なって何が虐待で何が虐待ではないのかの線引きが明確になることは施設で働く職員の方にとっても有益なのではないかと思います。

 虐待を防ぐためには、①目的は手段を正当化しないという障害者を取り巻く方の意識と、②虐待と思われるケースが潜在化しないための組織作りの両方が重要です。

 例えば、客観的に障害者のためになるからといって物理的な力を使って通帳を取り上げることはやはり虐待にあたるのだろうと思います。目的は正当でも手段が個人としての尊厳を無視した乱暴なものであれば容認することはできません。この場合には法に規定されている後見制度を利用しなければなりません。

目的が正当かどうかという問題と手段が適切かどうかという問題は区分けして考えなければなりません。この点を混同すると虐待が生じてしまいます。善意に基づく虐待は悪意による虐待よりもずっと厄介です。虐待者に虐待をしているという認識がないし、周囲も目的の正当性に目を奪われて多少のやりすぎは仕方ないと黙認してしまいがちだからです。いくら正しい目的のもとでも障害者の人格を蹂躙することは許されないことを明確に意識することが重要です。

(さらに続きます)

(師子角)

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