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刑事事件

2015年2月11日 (水)

刑事事件の初回無料接見

桜丘法律事務所では、本年1月中旬から、刑事事件の依頼について、初回の接見を無料で行うサービスを始めています。
http://www.sakuragaoka.gr.jp/first/

当事務所がこのサービスを始めたことを、まだ余り広く認知されてはいないようですが、刑事事件専門の事務所以外で、初回接見無料のサービスを行っている事務所は少ないのです。

 当事務所は、民事事件も多数扱っている事務所ですが、同時に、神山啓史弁護士を中心に刑事事件について情熱と高い能力を有する弁護士たちが活動していることで知られています。

 刑事事件においては、逮捕されたらすぐに弁護士が駆け付けることがどれだけ大切か、数多くの刑事事件を扱った私たちは、身を持って感じています。 誰でも初めて逮捕されたときには、普段はあんなに優しく見えた警察官が、大きな声を出し命令してくることに混乱し、自分の置かれた状況が全く見えないまま、警察官の言うなりに犯行を認める調書を次々に取られてしまいます。

 唯一の味方は弁護士なのに、弁護士が会いに来るまでに時間が掛っては、取り返しがつかなくなる可能性があります。

 一刻も早く身近な人が弁護士に払う費用のことを心配せずに、とにかく一度警察署に会いに行ってくれるよう電話を掛けて来てくれることが出来るように、私どもは、例え既に受けている事件で手一杯であろうと、優先的に時間を作ることを決意して、毎日の当番を決めて対応することにしました。

 これは、刑事事件に対する私どもの情熱の現れであります。

不肖、離婚弁護士を表象する私も、メンバーの一人として、電話が掛ってくることをお待ちしています。

安心して頼っていただくための入り口になることを願っております。

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2014年3月12日 (水)

精神発達遅滞の被告人への無罪判決が示唆すること

平成25年8月30日、京都地方裁判所で重度精神発達遅滞(田中ビネー知能検査ⅤでIQ25)の被告人に対して無罪判決が言い渡されました(判例時報2204-142)。

精神発達遅滞とは要するに知的障害のことです。侮蔑的な意味が含まれるとして現在はあまり好まれる表現になっていませんが、「知恵遅れ」などと言われることもあります。

被告人は普通乗用自動車1台を盗んだとして常習累犯窃盗罪で起訴されていました。常習累犯窃盗罪という言葉は法律家以外の方にとって馴染みのない犯罪だと思いますが、簡単に言えば過去10年以内に窃盗で3回以上服役した人が更に盗みを働いたときに成立する犯罪です(盗犯等ノ防止処分ニ関スル法律3条参照)。

この件でも自動車を盗んだとされているのは平成24年9月27日ですが、被告人は平成15年ころから既に3回も窃盗罪で服役していました。

 重度精神発達遅滞の事例は心神喪失を理由に不起訴となる例が多く、起訴された後に裁判で心身喪失と認定される例は極めて稀です。本判決は重度精神発達遅滞の場合につき責任能力を否定した数少ない判例として実務上注目を集めました。

 この判決は、事例として珍しいだけではなく、二つの点で重要な示唆を含んでいると考えています。

 一つ目は知的能力に問題のある被告人の表面的な言葉に惑わされてはならないという点です。

 最初に述べたとおり、常習累犯窃盗という犯罪は簡単に成立する犯罪ではありません。過去に少なくとも3回は刑事裁判を受けているはずです。何度となく機会がありながら被告人の責任能力は適切に評価されてきませんでした。

 被告人の責任能力を見抜けなかった理由の一つには、被告人が捕まる度に謝罪や反省の弁を述べていたことがあるようです。こうした言葉が述べられると「悪いことだと認識できているのだから責任能力を問うことに支障はないはずだ。」という発想に陥りがちです。

しかし、本件の被告人は「車を盗むのはいいことかわるいことか」という問いかけに対して「悪いこと」と答えはするものの、「なにがどう悪いの」と問いかけても応答できていませんでした。盗みが悪いことだという漠然とした認識はあったとしても、なぜそれをしてはいけないのかが全く理解されていなかったのです。

従前の裁判が被告人の更生に寄与できなかったのは、法曹関係者がこの点を看過していたからだと思われます。誰かがおかしいと思って責任能力の有無を慎重に調べていれば、裁判はより意味のあるものになっていたはずです。

 二つ目は司法と福祉とが適切に連携していれば、過去に罪を重ねた知的障害者であっても、罪を犯すことなく社会生活を営むことができるという点です。

 この被告人は窃盗だけではなく強制わいせつ(未遂)での前科も有しています。しかし、強制わいせつでの再犯は窃盗での再犯とは異なりきちんと自制できていました。

 判決文を読むと、この差が生じた理由が、福祉による支援が得られていたかどうかにあることが分かります。

 被告人は平成23年2月に刑務所を出た後、京都市東部障碍者地域生活支援センターの介護福祉士から支援を受けていました。この介護福祉士は強制わいせつ未遂での前科等を考慮し、再犯を起こさせないように留意しながら被告人を支援してきました。結果、被告人は強制わいせつが悪いことをある程度理解し、自制できるようになりました。

このことは窃盗の場合について尋ねられた時の受け答えとの対比から読み取ることができます。強制わいせつについては「いいことか悪いことか。」という問いかけに対して「悪いこと。」と答えた後、「どうして悪いことなの。」という問いかけに対して「かわいそうやからや。」と応じることができています。

 しかし、この介護福祉士は被告人の生活範囲に鍵を付けたままの自動車が多くあるということを認識しておらず、自動車盗は十分に警戒していませんでした。

 結果、自動車盗と強制わいせつとで、被告人の悪いことの認識や理解度には差がつくことになりました。そのことは被告人による本件犯行を許すことへと繋がりました。

 ただ、ここで私が指摘したいのは介護福祉士の職務の適否ではありません。重要なのはIQ25の重度精神発達遅滞の人であっても、適切なケアさえ受けられていれば、悪いことを悪いと認識した上で、罪を犯すことなく社会生活が営めるということです。この判決は福祉が知的障害者による累犯を阻止する希望となり得ることを示しています。

 もっと早く責任能力について適切な評価がなされ、福祉からの支援を受けていれば、被告人の人生は変わっていたかも知れません。犯罪の被害に傷つく人も生まれなかったかも知れません。最初に捕まった時点で、確かな知見を持った弁護人が、被告人に違和感を覚え、鑑定を請求し、十分な申し送り事項とともに被告人を福祉と結びつけていれば、被告人を含め不幸になる人はずっと少なかったと思います。

 責任能力が問題となる事件に限らず、知識・経験の十分な弁護人の関与は、裁判を意義のあるものにするために欠かすことができません。

 当事務所は刑事弁護に特に力を入れています(http://keiji.sakuragaoka.gr.jp/)

 刑事事件に関してお困りの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

(師子角允彬)

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2013年10月 3日 (木)

現代人文社「傍聴弁護人から異議あり!」

先日の「刑事弁護プラクティス」に続き,現代人文社より,間もなく「傍聴弁護人から異議あり!」が出版されます。

本書では,当事務所の亀井真紀弁護士が担当した裁判員事件と,当事務所出身の田岡直博弁護士が担当した裁判員事件が取り上げられています。

「裁判長!ここは懲役4年でどうすか」などの法廷傍聴記で有名な北尾トロさんが,いくつもの裁判員裁判を傍聴して,「弁護人の一人になったつもりで」弁護人の弁護活動を批評したものです。軽妙ながら鋭い指摘がなされており,なるほど,弁護活動がこのように受け止められているのかと,とても参考になりました。

特に刑事事件を取り扱う弁護士にお勧め出来る内容だと思いました。
(新谷泰真)

Igiari


2013年6月28日 (金)

北区収賄冤罪事件・不起訴のお知らせ

(★記事作成につき,依頼者のご了解を得ています。)

 当事務所の,新谷泰真,石丸文佳,髙木良平弁護士が弁護人を務めていた,東京都北区営繕課主任主事(以下,「依頼者」といいます)の収賄事件は,平成25年6月24日付で,嫌疑不十分による不起訴処分となりましたので,ご報告いたします。

「東京・北区主事らを不起訴 贈収賄の証拠「見つからず」」
http://www.asahi.com/national/update/0624/TKY201306240427.html

東京地検は24日、東京都北区発注の中学校校舎新築工事にからみ、収賄容疑で警視庁に逮捕された北区の営繕課主任主事(60)と、贈賄容疑で逮捕された同区内の建築会社専務(61)を嫌疑不十分で不起訴処分とし、発表した。処分理由は「贈収賄と認めるに足る証拠が見つからなかった」と説明した。

「北区中学工事汚職、贈・収賄側とも異例の不起訴」
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20130624-OYT1T01670.htm?from=ylist

東京都北区の中学校新築工事を巡る汚職事件で、東京地検特捜部は24日、警視庁に収賄容疑で逮捕され、処分保留で釈放された同区営繕課の主任主事(60)と、贈賄容疑で逮捕され、同様に釈放された建築会社専務(61)をそれぞれ不起訴(嫌疑不十分)とした。


 捜査機関が逮捕に踏み切った汚職事件で、贈賄側、収賄側共に不起訴となるのは極めて異例。特捜部は「逮捕するだけの疑いはあったが、起訴に足りる証拠はなかった」として詳細な理由は明かさなかった。捜査を担当した警視庁幹部は「不起訴については地検が判断したことなので、コメントする立場にない」と話している。

本事件は,東京都北区発注の中学校校舎新築工事にからみ、建設業者に入札予定価格を教える見返りに,現金を受け取ったという収賄罪の容疑で逮捕された事件です。

依頼者が入札予定価格を業者に教えた事実も,現金を受け取った事実もなく,依頼者は収賄事件とは全く無関係でした。

しかしながら,捜査機関の見込み捜査により,犯人と目された依頼者は,逮捕前から,長期間・長時間にわたる取調べを受けることになりました。捜査機関としては,依頼者が収賄を犯したという前提,つまり依頼者が犯人である事を前提に取調をするわけですから,身に覚えがないことだと主張しても聞き入れてもらえません。
また,捜査を受けていることを誰にも話さないように,と固く口止めされたため,依頼者は,家族に相談することもできず,弁護士と相談することもできず,一人で取り調べを受け続けることになりました。

自分の言い分を聞いてもらえず,連日のように犯人と決めつけられる取調べを受け続ける中で,依頼者は次第に心を折られていき,自分の言い分をきちんと主張する気力を失っていってしまいました。そして,警察の誘導に乗る形で,収賄を認める供述をするようになりました。

依頼者からの自白が得られたことで,捜査機関は,正式に事件を立件しようと,依頼者の逮捕に踏み切りました。

逮捕後,我々が弁護人として受任した当初から,依頼者は,「自分は収賄事件などやっていない。工事の予定価格を漏らしたこともないし,現金を受け取ったこともない」と明言しました。

逮捕後も,連日長時間にわたり,厳しい取調べが行われ,捜査機関は依頼者の自白を引き出そうと躍起になりましたが,弁護団も連日接見を行い,依頼者を励まし続けると共に,絶対に虚偽の自白をしないよう,アドバイスを続けました。
また,検察官に対して,録画による取り調べの可視化をするよう申し入れると共に,不当な取調べが行われた際には,取調べに対する抗議を適宜行い,虚偽自白を防ぐことに努めました。
(結局,可視化はされませんでしたが…)

同時に,刑事証拠保全手続きの申立を行って弁護側証拠の収集に努めるとともに,勾留理由開示をおこない,公開の法廷で,無実を訴える依頼者の言い分を明らかにしました。

捜査機関は,依頼者を逮捕した後,依頼者の通帳やキャッシュカード等を差押え,金銭の受領や受領した金銭の使途などの捜査をしていました。しかし,本件では,もともと金銭授受の事実自体がありませんから,依頼者が現金を受領したり,多額の現金を使ったりした形跡が出るはずもありません。

結局,依頼者と収賄事件とを結びつける証拠は見つからず,勾留期限の満期を持って釈放された後,6月24日付で,検察官は起訴を断念しました。

本件の問題点は,関係者の自白に頼った見込み捜査が行われ,かつ,強引な取調べも辞さずに自白を獲得することに力が注がれる一方で,金銭の使途など,金銭の授受に関する客観的な証拠の収集・検討を怠ったことです。任意捜査の段階から,客観的な証拠を収集して慎重に検討していれば,そもそも事件が成り立たないこと,依頼者が収賄事件とは無関係である事が早期に判明し,依頼者が逮捕されることもなかったのではないかと思えてなりません。

旧態依然とした,自白偏重の捜査が,今回のような事態を招いたと言ってよいでしょう。自白偏重の弊害は明らかであり,そこからの脱却は急務でしょうし,強引な取調べを防止するためにも,取調べの可視化は必須であると感じた事件でした。

最後に,今回の不起訴処分により,無辜の依頼者が裁判にかけられることなく,もとの平穏な生活を取り戻せたことを,何よりも嬉しく思います。

(新谷泰真)

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2013年5月 9日 (木)

痴漢サイト成りすまし事件

今日,驚くような事件が報道されていました。

痴漢交流サイト“なりすまし”に騙され?堂々お触りの男逮捕 http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/130509/crm13050907400003-n1.htm 痴漢のインターネットサイトを利用した同容疑者は、合意の上での「痴漢プレー」を主張しているが、女性はこれを全面否定。同署は、何者かがネット上で女性に成り済ましたとみて調べている。

容疑者が利用したとみられる痴漢プレー掲示板には「和歌山線で痴漢してくれる人いませんか」などの書き込みがあり、座っている車両も指定していた。途中駅で下車した男もこのサイトを利用したとみられる。

痴漢サイト成り済まし?女性わいせつ被害、電車で隣の男が触る http://www.sponichi.co.jp/society/news/2013/05/09/kiji/K20130509005765670.html

容疑者は「ネットのサイトで女性から電車の時間と車両を指定された」と供述。女性は通勤時、いつも同じ席に座っているといい、同署はこの習慣を知る人物が成り済ましたのではないかとみて調べている。

被害に遭った女性はとてもお気の毒です。また,被害女性に何らかの悪意をもってなりすました人物がいることも,気味が悪い感じがします。

さて,この事例,刑法や刑事弁護の観点から見ると,なかなか興味深い問題を含んでいます。
本件の被疑者は強制わいせつ罪で逮捕されていますが,言い分としては,「触ったことは間違いないが,ネットの書き込みは本人によるものと信じており,本人の承諾があったと信じていた」というものになるのでしょう。

強制わいせつ罪においては,被害者の承諾があることは構成要件該当性を阻却する事由になります。承諾があったと誤信していたのであれば,故意がかけるために犯罪が成立しないということになりそうです。

仮に自分が本件の弁護人になった場合は,対捜査機関の関係では,承諾があったと誤信し,故意がかけるために犯罪が成立しない,不起訴処分にすべきだという主張をしつつ,対被害者との関係では,結果として意に反して猥褻行為を働いたことは間違いないので,謝罪の上示談交渉を試みて,告訴取消による不起訴処分を目指すという,両面作戦をとるのではないか,ということを,報道を見て考えていました。

当事務所でも,痴漢事件の刑事弁護は多く取り扱っていますが,このような珍しい事例は見たことがありません。

(新谷泰真)

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2013年2月14日 (木)

勾留について

グアムで痛ましい通り魔事件が起こりました。グアムは日本からも近く,観光客のほとんどが日本人という観光地です。リゾートや観光に出かけた先で,なぜこのような事件に巻き込まれなければならないのかと思うと,残念でなりません。亡くなられた方のご冥福をお祈りすると共に,怪我をされた方の一刻も早い回復をお祈りしています。

さて,この事件については,被疑者が勾留されたとのニュースが出ていました。

http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG1400Y_U3A210C1CR0000/

ニュース中,

 検察当局は13日に刑事手続きを開始。容疑者は同日、勾留手続きのため裁判所に出廷し、裁判所は200万ドル(約1億8700万円)の保釈金を設定して勾留を命じた。

との記載があり,日本の被疑者の勾留制度とはずいぶん違うのだな,と驚きました。

日本の場合,被疑者段階での勾留には保釈制度はなく,保釈が可能になるのは起訴されてからとなっています。また,殺人罪のような重大犯罪,特に本件のように何人も死傷させている事件では,起訴された後であってもなかなか保釈が認められるものではありません。弁護人からすると,非常に抽象的な罪証隠滅の恐れ等を理由に,保釈が通らない事案も数多いと感じます。

それに比べると,高額の保釈保証金を設定するという条件は付くものの,被疑者段階で,なおかつ本件のような重大事件であっても,身体拘束からの解放の途を残しておくグアムの制度は,ずいぶん大胆な制度のように感じられました。
(もっとも,これだけ高額の保釈保証金を納めるのは非常に難しいでしょうから,事実上釈放はされないことには変わりないのでしょう)

同様の制度を日本にそのまま導入してよいかは検討する必要がありますが,少なくともまずは争いの無い比較的軽微な事件から,被疑者段階での保釈制度を導入して,不必要な身体拘束を減らしていってもよいのではないか,と思いました。

(新谷泰真)

2013年2月 7日 (木)

遮へい措置

 先日担当した裁判員裁判で,証人本人の希望で,遮へい措置が解かれたという場面がありました。遮へい措置を安易に認める運用に疑問をもったので,少しコメントします。

 刑事裁判では,一定の場合に,証人尋問の際の遮へい措置が認めらます(刑訴法157条の3第1項及び第2項)。「遮へい措置」というのは,具体的には,①証人と被告人の間に衝立を立てて,一方から又は相互に相手の状態を認識できなくすること,②証人と傍聴人の間に衝立を立てて,相互に相手の状態を認識できなくすることです。

 被告人には証人に尋問をする権利があります(憲法37条2項)。被告人としては,十分に尋問を行うため,単に証人がどんな内容を証言しているのかだけでなく,どんな表情や仕草で証言をしているのかを法廷で確認する必要があります。また,裁判は公開が原則です(憲法82条1項)。国民としても,公正な裁判が行われているかを監視するため,証言内容だけでなく,証人の表情・仕草を確認する必要があります。したがって,証人と被告人の間も,証人と傍聴人の間も,遮へい措置は認められないのが「原則」です。

 とはいえ,事件の内容,証人と被告人との関係,証人と傍聴に来る可能性のある関係者との関係等によっては,証人が,被告人や傍聴人の前で証言することが精神的に難しいという場合があります。証人が証言できなければ,真実の発見が後退します。そこで,証人と被告人の間は,「圧迫を受け精神の平穏を著しく害されるおそれがあると認める場合であって,相当と認めるとき」に(刑訴法157条の3第1項),証人と傍聴人の間は,「相当と認めるときに」(刑訴法157条の3第2項)に限って,遮へい措置が認められることになっているのです。あくまで,遮へい措置は,証人の自由な証言を確保する必要性から認められる「例外」です。

 先日の裁判員裁判は,息子が母親に凶器で怪我をさせたという親子の事件でした。検察官は被害者の母親を証人として申請するとともに,証人と被告人の間,証人と傍聴人の間の遮へい措置を求めました。弁護人は遮へい措置は不要である旨の意見を述べました。裁判所は,検察官の意見に従って,証人と被告人の間,証人と傍聴人の間の遮へい措置を認めました。

 実際に証人尋問が始まると,不思議なことが起きました。弁護人は,母親に,どういう気持ちで遮へい措置を希望したのかを質問しました。すると,証人の母親は,裁判官と裁判員に言いました。「遮へいって何ですか?これ(衝立)は何のためにあるんですか?これ(衝立)いらないんですけど。息子はここ(法廷)にいるんですか?息子に会いたいんですけど。」

 弁護人は,そうであれば,遮へい措置の必要はない旨の意見を述べました。その結果,証人と被告人の間の衝立は撤去されました。親子の久しぶりの再会でした。証人が被告人に話しかけたため,尋問は一時中断しました。再開後,弁護人は,久しぶりに息子の顔をみてどう思ったかを質問しました。

 弁護人として疑問に思うのは,検察官は,本当に,証人の自由な証言を確保する必要があると考えて遮へい措置を求めたのかという点です。検察官は,捜査段階で,被告人に対する被害感情を述べた母親の調書をとっていました。母親が法廷で被告人の姿を見たら,息子に対する気持ちから被害感情についての証言を変えるかもしれません。でも,遮へい措置をしておけば,そのリスクを減らせます。断定はできませんが,あの法廷での母親の言葉を聞く限り,遮へい措置をしたかったのは,証人ではなく,検察官だったのではないか。「やっぱり,被告人のことは怖いという気持ちがあるんですよね。」と証人を誘導して,恣意的に遮へい措置を求めたのではないか。そんな疑念をもたざるをえません。

 裁判所に対しても,検察官の言うことを鵜呑みにして安易に遮へい措置を認めることがないよう,十分注意をしてもらいたいと思いました。

(鏑木信行)

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2013年2月 5日 (火)

障害者刑事弁護人名簿

 刑事弁護をしていると,被疑者や被告人に,知的能力の問題を抱えている人が多いことに驚かされます。法務省の平成23年矯正統計年報によると,2011年中の新受刑者25,499人のうち,IQ69以下の,医学モデルで言う知的障害者は,5,532人であり,新受刑者総数に対する比率は21.69%ということです。知能分布指数によるIQ69以下の比率は2.25%であることからすると,刑務所における知的障害者の比率は,一般社会におけるそれの約10倍であるということが言えます。

 知的能力に問題のある被疑者は,捜査官に誘導や刷り込みの影響を受けやすいという特徴があります。弁護人としては,被疑者に障害があることを早期に発見し,それに応じた被疑者本人へのアドバイス,捜査機関への申入れ,福祉機関との連携等をしてくことが必要になります。

 しかしながら,全ての弁護人が知的能力に問題のある被疑者の弁護に精通しているわけではありません。そこで,大阪弁護士会では,平成23年11月から,「障害者刑事弁護人名簿」を作成し,裁判所から被疑者国選の依頼を受ける際,知的障害や精神障害の有無を連絡してもらうとともに,こうした障害に関する知識を持つ弁護士を派遣する新制度を始めています。
http://sankei.jp.msn.com/region/news/120908/osk12090814070010-n1.htm
東京でも,早期に同じような制度を実現すべきでしょう。

桜丘法律事務所事務所では,同様の問題意識から,これまでも知的能力に問題のある被疑者・被告人の刑事弁護を積極的に行ってきました。これらの方々の支援にあたる地域活動支援センターとも,定期的に勉強会を行ってきました。知的能力の問題を抱えたご親族やご友人が逮捕された場合,警察から取調べを受けた場合は,特別な配慮が必要です。ぜび,私どもにお気軽にご相談ください。

(鏑木信行)

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2013年1月18日 (金)

無罪弁護報告

古宮です。1月10日に痴漢事件で無罪判決を獲得することができました。

本件は電車内の痴漢事件です。犯人として逮捕されたAさんは、私が初めて警察に接見に行った際、自分はやっていない、混雑した電車内に立っていたら目の前の女性(被害者)から突然手を掴まれて「痴漢ですよね。」と言われ、手を引かれて駅の警備員に引き渡されたと訴え、犯人であることを否認していました。

 電車内の痴漢事件という事件の性質上、もともと目撃証言や物的証拠など客観的な証拠が乏しいと思われました。それだけに無理やり自白させられる恐れがあります。そこで私はAさんに対し、黙秘権の行使を指示しました。

 ただ、そうは言っても多くの被疑者は、結局黙秘を貫くことができず取調べに応じてしまいます。それほど,警察,検察の「取調べ技術=自白獲得の技術」は高いのです。そのため私は、先輩である師子角弁護士と共同で、翌日から毎日接見に赴き、黙秘を続けるよう励ましました。その甲斐あって、Aさんは満期まで黙秘を貫くことができました。

Aさんは起訴されました。しかし、予想どおり本件は証拠が乏しく、Aさんと犯人とを結びつける証拠は、被害者の供述だけでした。更に、被害者供述には重要な部分に矛盾がありました。検察から公判前に開示された駅の防犯ビデオカメラの画像とは明らかに異なる供述をしていたのです。被害者は公判でもこの供述を維持しました。

証拠調べ手続きが終了し弁護人からの意見を述べる際、私は、Aさんと犯人とを結びつける唯一の証拠である被害者供述には矛盾があり信用できないからAさんは無罪であると弁論しました。

「判決、主文、被告人は、無罪」。Aさんの目は潤んでいました。
裁判官は、被害者供述が信用できないこと等を理由に,Aさんを犯人であると認定することはできないと判断したのです。

電車内の痴漢は勘違いが起こりやすい類型の事件であるため,証拠を慎重に吟味することが重要です。改めてこの事件を振り返ると,検察官は,客観的な証拠を精査しないまま被害者の供述のみに依拠してずさんな起訴したものと言わざるを得ません。公益の代表者たる検察官としては,えん罪を防ぐ観点からも証拠の吟味を十分にしてほしいと思います。

(古宮靖子)

2013年1月10日 (木)

無罪獲得

本日当事務所の若手、古宮靖子弁護士が、痴漢事件で無罪を獲得しました。登録わずか1年の弁護士が単独で無罪を獲得することはめったにありません。被疑者段階から被疑者援助で受任し,起訴後は国選に切替え、神山ゼミで厳しい指導を受けながら担当した事件でした。まずは本人の努力を称えたいと思います。

また私たちは、今後も、ベテランの指導とチームワークの良さを生かして日々のあらゆる弁護活動に取り組んで行きたいと思います。

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