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民事事件

2015年8月25日 (火)

残業代の未払と会社役員の責任

残業代の時効は2年とされています(労働基準法115条 ただし、不法行為に基づいて3年まで遡れる可能性があります)。

 時効期間が短くて多額の請求ができないようにも思われがちですが、長時間労働と残業代の未払が常態化している企業では、従業員1人あたり100万円を超える残業代が未払になっていることもあります。

 そうした企業で何人かが示し合わせて残業代を請求すると、会社は相当高額な請求を受けることになります。

 企業規模が小さい場合、被告会社には残業代を払えないことがあります。残業代を十分に回収できない場合、労働者の側で被告会社の取締役個人の責任を追及することはできないのか、取締役には個人の責任を追及されるリスクがあるのか、が本稿のテーマです。

 この問題を考えるにあたっては大阪地裁の判例(大阪地判平21.1.15労判979-16)が参考になります。

 この判例の原告は残業代を会社に請求して勝訴したものの支払を受けられなかった労働者達です。原告らは会社の取締役や監査役が任務を怠ったせいで割増賃金相当額の損害を被ったと主張して役員個人に対して損害賠償を請求しました。

 裁判所は、

「株式会社の取締役及び監査役は、会社に対する善管注意義務ないし忠実義務として、会社に労働基準法37条を遵守させ、被用者に対して割増賃金を支払わせる義務を負っているというべきである」「取締役の善管注意義務ないし忠実義務は、会社資産の横領、背任、取引行為など財産的範疇に属する任務懈怠だけでなく、会社の使用者としての立場から遵守されるべき労働基準法上の履行に関する任務懈怠も包含する」

と述べた後、

「代表取締役である被告甲野については、昭和観光が倒産の危機にあり、割増賃金を支払うことが極めて困難な状況にあったなどの特段の事情がない限り、取締役の上記義務に違反する任務懈怠が認められるというべきである」 「被告甲野以外の被告らは、本件で問題とされている原告らに対する割増賃金の未払の生じた後に、昭和観光の取締役ないし監査役に就任している以上、昭和観光をして原告に対し上記未払いの割増し賃金の支払をさせる機会はあったというべきである。したがって、被告甲野以外の被告らが、悪意又は重過失により、取締役ないし監査役として負っている上記1で認定した義務に違反して、昭和観光をして原告らに上記未払いの割増賃金を支払わせなかった場合には、被告甲野の以外の被告らは、商法266条の3(280条1項)に基づき、原告らに対し損害賠償責任を負うことになる」

と判示して各役員の責任を認めました。

 簡単にまとめると、倒産の危機にあって割増賃金を支払うことが極めて困難であったなどの例外的な事情がない限り、割増賃金を支払わないことは原則として取締役や監査役に損害賠償責任を発生させる要件としての「任務懈怠」に該当するということです(判例は旧商法の時代ですが、会社法にも同様のルールが引き継がれています)。

 会社に残業代を請求して回収できない場合、労働者は役員個人を相手に損害賠償の名目で時間外勤務手当を請求することが考えられます。役員の側には、残業代の未払を放置していると個人責任を追及されるリスクがあります。

 残業代を回収できずにお困りの方、適切な労務管理をしたいと考えている経営者の方、当事務所ではいずれの立場の方からのご相談にも応じさせて頂くことが可能です。お心あたりのある方は、ぜひご一報ください。

(師子角允彬)


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2015年8月24日 (月)

残業代は何年前まで遡って請求できるのか

残業代の消滅時効は2年とされています。

これは、労働基準法115条の

「この法律の規定による賃金(退職手当を除く。)、災害補償その他の請求権は二年間、この法律の規定による退職手当の請求権は五年間行わない場合においては、時効によって消滅する。」

という規定が根拠になっています。

 時間外勤務手当は「賃金…その他の請求権」に該当するという理解です。

 この規定があるため、未払残業代を請求する場合、過去2年分に限定して請求している例が多々みられます。

 しかし、未払残業代の請求は必ずしも過去2年以内に限定されるわけではありません。残業代の未払を不法行為と構成することで、3年分まで遡って請求できる可能性があります(注.民法723条で不法行為に基づく損害賠償請求権は損害及び加害者を知った時から3年間は行使可能とされているからです)。

 この点に関しては、広島高等裁判所で判決が言い渡されています(広島高判平19.9.4判タ1259-262)。

 この判例は掲載紙上で「時間外手当請求権が労基法115条によって時効消滅した後においても、使用者側の不法行為を理由として未払時間外勤務手当相当額の請求が認められた事例」として紹介されています。

 裁判所は消滅時効の完成をいう被告(被控訴人)の主張に対し、「被控訴人は、…時間外勤務手当については、仮に存在しても、本件提訴が平成18年7月14日であることからすれば、労働基準法115条によって2年の消滅時効が完成しているとの主張をする。しかしながら、本件は不法行為に基づく損害賠償請求であって、その成立要件、時効消滅期間も異なるから、その主張は失当である」と判示し、未払時間外勤務手当相当分を不法行為を原因として請求することを認めました。

 法律には「特別法は一般法を破る」という原則があります。

 賃金や時間外勤務手当の不払いは微罪ながら犯罪とされています(労働基準法120条1号、同法24条、同法119条1号、37条)。賃金や時間外勤務手当を支払わないことは常識的に考えれば、不法行為にも該当します。そういう意味では賃金の時効は不法行為一般に対する特別法という見方ができるかも知れません。しかし、広島高裁はそのような見方を否定し、不法行為の成立要件を満たす限り、不法行為を根拠として未払時間外勤務相当分を請求できると判断しました。労働者側にとっては画期的な判例であると思われます。

 もちろん、広島高裁の判例があるからと言って、全ての事案で3年分の請求が可能というわけではないと思います。請求するには不法行為の成立要件を満たす必要がありますし、広島高裁の事例は「出勤簿には、…出退勤の時刻が全く記載されて」いないことが指摘されるなど残業代の未払事件の中でも相当悪質な事案です。広島高裁の判決の論理がどの事案まで適用できるのかは法律家として当然慎重に検討するところだと思います。

 しかし、そうした検討を経ないで流れ作業的に2年分しか残業代を請求しないように思われる場合、依頼人としては他の弁護士にセカンドオピニオンを求めても良いかも知れません。先に述べたとおり、賃金や時間外勤務手当の不払いが(象徴的な意味であるにせよ)犯罪とされていることからすれば、その違法性は強いはずで基本的には不払いは不法行為の成立要件を満たすはずだという視点があっても良いからです。

 請求権が2年分か3年分かは割合にして1.5倍の差があります。決して無視できるような差ではありません。

 お困りの方、ご不安をお抱えの方は、ぜひ一度ご相談ください。

(師子角 允彬)


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2015年8月21日 (金)

低い基本給と定額残業代が招く紛争について

「定額残業代」とは時間外労働の対価を定額で支払うことをいいます。

 残業代を一律定額で支払うことができるのかは、法律上、明文で規定されているわけではありません。

 この問題について最高裁判所は、
① 支払われた賃金のうちどの部分が通常の賃金で、どの部分が割増部分であるかが判別可能であること、
② 当該割増賃金相当額が法所定の額を満たさないときには、その差額が支払われること、
との二つの条件が満たされる場合には適法だという姿勢をとっています(最判昭和63.7.14労判523-6、最判平成6.6.13労判653-12等参照)。

 近時、この最高裁の判断を逆手にとって人件費節約の手段として定額残業代を利用する企業が増加しています。具体的に言えば、基本給を引き下げ、その部分を定額残業代に転嫁するという手法です。

 例えば、基本給20万円で働いていた人がいたとします。このままだと時間外労働をさせた場合に残業代を支払わなければなりません。これを避けるため、基本給を10万円に減額するとともに、定額時間外勤務手当(残業代)として10万円を支払うように賃金を改定します。そうすると、もともとの基本給が低いこととあいまって、かなり長い時間、賃金月額20万円のラインを動かさずに残業をさせることができるようになります。

 上に述べたのは飽くまでも説明を分かりやすくするための例えです。実際にはもっと巧妙で分かりにくく行われます。定額残業代に関しては形式上最高裁の判断に合致しているように見えることもあり、泣き寝入りをしている方も多いのではないかと思います。

 しかし、当然のことながら、裁判所は上記のような脱法行為を野放しにはしていません。例えば、東京高判平成26年11月26日労判1110-46は、次のような事実関係のもと、使用者から支給された「時間外勤務手当」が基本給と同様に残業代を計算する上での基礎賃金に含まれると判断しました。

 被告会社は元々、原告に対して、①基本給20万円、②住宅手当、③配偶者手当1万5000円、④資格手当2000円、⑤非課税通勤費3360円に加え、⑥毎月数万円程度の時間外勤務手当を支給していました。

 これが賃金の改定を経て、①基本給18万5000円、②営業手当12万5000円に改定されました(内訳 時間外勤務手当8万2000円、休日出勤手当2万5000円、深夜勤務手当1万8000円)。

 裁判で残業代の支払が求められたのは、平成23年3月から平成25年2月までの分ですが(このようになっているのは残業代の時効が2年だからだと思われます)、この時の原告の賃金は、①基本給24~25万円、②営業手当17万5000円~18万5000円となっていました。

 裁判所は営業手当の性質を

「割増賃金の対価としての性格を有すると評価できなくもない」

としながらも、

「上記営業手当はおおむね100時間の時間外労働に対する割増賃金の額に相当することになる。」「100時間という長時間の時間外労働を恒常的に行わせることが上記法令の趣旨に反するものであることは明らかであるから…恒常的な長時間労働を是認する趣旨で、控訴人・被控訴人の労働契約において本件営業手当の支払いが合意されたとの時事を認めることは困難である」

「さらに、…変更前後の上記内訳、金額に照らすと、上記営業手当には、従前基本給、住宅手当、配偶者手当、資格手当として支払われていた部分が含まれていたと推認することができる。」

と述べて、

「本件営業手当の全額が割増賃金の対価としての性格を有すると認めることはできない」

と判断しました。

 その上で「本件営業手当は、割増賃金に相当する部分とそれ以外の部分についての区別が明確になっていない」(最高裁が提示した条件の②が満たされない)として、定額残業代によって割増賃金の支払義務は消滅したと
の被告の主張を排斥しました。

 その結果、

「本件営業手当は、基本給とともに、割増賃金算定の基礎賃金となる。」

ことになりました。

 この裁判例は労働者の側からも使用者の側からも重要な意味を持っています。

 労働者の側から見ると、基本給が極端に低く抑えられている場合、比較的高額の時間外勤務手当が定められていたとしても、それは適法な残業代の支払とは認められないとして改めて残業代を請求できる可能性があるということです。低い基本給のもと長時間労働を強いられている労働者にとっては画期的な判例といえます。

 使用者の側から見た場合、法の潜脱ととられかねないような賃金体系を構築すると手痛いしっぺ返しをくらうことを意味します。東京高裁の判例は営業手当が割増賃金の対価としての性質を有することを認めています。しかし、営業手当は基礎賃金に含められた上、未払残業代の計算にあたり全く考慮されませんでした。使用者としては、まさに踏んだり蹴ったりで二重の不利益を受けたことになります。

 法の抜け穴は滅多にあるものではありません。一体誰が基本給を極端に低く抑えて定額残業代を活用するという手法を広めているのかは不分明ですが、脱法的なアドバイスを真に受けると酷い目に遭うことがあります。

 極端に低い基本給と定額残業代のせいで長時間・低賃金労働を強いられている労働者の方も、適切な賃金体系の構築にお悩みの経営者の方も、直観的に問題がありそうだなと思ったら、取り敢えず法律家に意見を求めてみることをお勧めします。

 もちろん、当事務所でもご相談はお受け付けします。

(師子角允彬)


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2015年8月18日 (火)

借金が返済できなくなったときの対処法 〜破産って?〜

弁護士が増え、借金問題については無料相談の機会も増えました。

それでも、「どうしてこんなになるまで相談しなかったんだろう…」と思う事件は減りません。特に、借金の問題については、破産という「借金をなくしてしまう」魔法のような手段があるのに、何年も苦しみを抱え、体調も、家族との関係を悪化している方に多く出会います。

改めて、破産、という方法がいかに素晴らしいかを、少しだけ説明させていただきます(わかりやすさを優先しています。細部は弁護士にご相談下さい)。

破産のデメリットは、基本的に次の5つしかありません。戸籍にのったり住民票にのったりするわけではありません。あなたが誰かに話さない以上、友人や知人が気づかないうちに借金はなくなるでしょう。
【デメリット】

・ 向こう10年間、新たに借り入れをすることは難しくなります。ただ、すでに借り入れはできなくなっていませんか?別に借り入れができなくても、生活に困らない方がほとんどでしょう。

・ 「官報」という国の新聞に一度だけ小さく掲載されます。ただ、ほとんどの方は読んだことないですよね?あなたの知人も友人もそうだと思いますよ。私の知る限り、官報から知人に知れてしまった、という例は聞いたことがありません。

・ 一定の資格制限はあります。警備員や、保険の外交員などがこれにあたりますが、ほとんどの人には無関係でしょう。実はこういった制限も、破産手続き「中」だけの場合がほとんどです。

・ 99万円以下の現金を除いて、その他の財産を手放すことになります(県によって運用は異なります)。ただ、財産が手元にないから困っているんですよね?もし処分したくない財産があるときは、弁護士にご相談ください。県ごとの運用で問題にならないこともあります(自動車など)。もちろん、次の月にもらえる給料や年金は問題なく受け取れます。

・ 一度破産すると、7年間破産できません。まあ、別にいいですよね?

【その他】
 破産手続きは、自分の借金と財産を書面にまとめて裁判所に提出する手続きです。普通は数ヶ月で終わります。弁護士費用についても、収入が多くない場合は国の独立行政法人が立て替えてくれます。

 確かに破産、というネーミングへのイメージは悪いかもしれませんが、体調や、家族との関係を壊してまで嫌がるものではありません。ぜひ、大切なものを壊す前に弁護士にご相談ください。

(小口幸人)

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2015年2月10日 (火)

成年後見と死後事務~ご遺体の引取~

成年後見人として人の死後の事務に関わることがあります。

成年後見は被後見人の死亡によって終了します。それ故、亡くなった瞬間に後見人ではなくなるのでそれまで有していた財産管理権、法定代理権がなくなることになります。

そして、元後見人に明文上残された義務は、管理の計算(民法870条)と相続人への財産引き継ぎ事務という限られたものになります。

しかし、実際には様々な場面で悩ましいことがあります。そのひとつがご遺体の引取ではないでしょうか。

被後見人が亡くなった場合、親族がいれば、死亡診断書の入手から始まり、役場への死亡届、葬儀・荼毘の手続き一切をお任せするのが一般的です。ご遺体の引取や搬送も手続きのひとつとして親族の方が手配等してくれます。元後見人が基本的に一連の手続きに関与する必要はありません(もちろん長くお付き合いした者として手を合わせに行くことはあります)。

 ただし、そのようにすみやかに一連の手続きを行ってくれる方が親族にいない場合は、元後見人が関係者から事実上手続きを求められることがあります。特に至急の対応を求められるのが病院からのご遺体の引取りです。というのは、病院によっては霊安室が必ずしもあるわけではなく、亡くなった方のために病室を確保しておくのは物理的に困難であることが多いからです。病室に余裕があったとしても冬ならばともかく夏は長時間置いておくのは望ましくありません。

 それ故、すぐに親族にすぐ連絡がとれない、対応してくれないなどの時は、昼夜問わず元後見人が病院から対応を迫られます。病院にとってみれば、入院時の契約や様々な支払いの対応をしてくれていた後見人が本人死亡により急に何もやってくれなくなるというのは納得・理解し難いでしょう。無下に対応すれば、今後後見人がついていても身寄りがない患者を引き受けてくれない可能性もあります。それは社会にとっても困ることです。

 また、墓地・埋葬等に関する法律によれば、死体の埋葬又は火葬を行う者がないとき又は判明しないときは、死亡地の市長村長が行わなければならないと定められていますが、現実には自治体がすみやかに遺体の引取をしてくれるとは思えません。そのような交渉をやっている時間もありません。

 では、どうするか。

正解がある話ではありませんが、病院では患者が亡くなった場合に遺体の搬送をよくお願いしている葬儀業者があるはずなので、そういった業者を聞いて、まずはその葬儀業者に搬送を依頼するというのが適当と思われます。搬送先は、元後見人の自宅や事務所というわけにいきませんから、近くの斎場等の安置所になることが多いと思います。業者の方も慣れていて休日や深夜でも対応してくれるのが一般的です。

もちろんその場合費用が発生します。当該費用を亡くなった本人の財産から支出するのか、いったんは元後見人が個人で立て替えるのかという問題が生じますが、民法上の応急処分義務(民法654条)と解する余地があり、そうであれば本人の財産から支出することができるといえます。常識的に考えても必ず発生するものであり、本人にとっても相続人にとっても必要有益な支出です。仮に元後見人が一時的に立替支出したとしても、財産を相続人に引き継ぐ時に精算することもできます。

そして、平行して親族の方に連絡をとり、ご意見を聞きながらその後の手続きを行っていくことになります。本当に身寄りがない方の場合には、やむを得ず元後見人が喪主として最低限の葬儀を行うこともあります。このあたりになるとどこまでやるべきかというのはさらに悩ましく、専門職によっても意見は分かれるかもしれません。結局ケースバイケースの対応をそれぞれの判断で行っているというのが実状です。家庭裁判所も明確なことはなかなか言いませんが、基本的には常識に従った対応であれば許容しているものと理解しています。

いずれにしても、死後事務で大事なのは、「もう権限も義務もない」と言って何もしないことが通用するわけではないということです。

高齢化社会が進むにつれて後見申立も増加し、数年前に比べれば社会での後見制度の認知度は明らかに高くなっています。しかも昨今は親族後見人選任率よりも専門職後見人(弁護士や司法書士など)選任率が上回っています。そうであれば必ず生ずる死後事務については、法律でもう少し明確なルールを定めるべきと思います。それまでは元後見人が悩みながらもひとつひとつ誠実に対処していくほかありません。

(亀井真紀)

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2015年1月27日 (火)

生活保護法第78条に基づく徴収債権の非免責債権化

個人が自己破産手続をとったときに,大半の債権(借金など)は破産の免責手続によって免責され,支払義務を免れます。

しかし,一定の債権については,破産の免責手続によっても免責されず,破産手続後も支払義務が存続することになります。

どのような債権が非免責債権となるかというと,破産法第253条に定めが置かれており,下記の債権が該当します。

一  租税等の請求権(共助対象外国租税の請求権を除く。)
二  破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権
三  破産者が故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権(前号に掲げる請求権を除く。)
四  次に掲げる義務に係る請求権
イ 民法第七百五十二条 の規定による夫婦間の協力及び扶助の義務
ロ 民法第七百六十条 の規定による婚姻から生ずる費用の分担の義務
ハ 民法第七百六十六条 (同法第七百四十九条 、第七百七十一条及び第七百八十八条において準用する場合を含む。)の規定による子の監護に関する義務
ニ 民法第八百七十七条 から第八百八十条 までの規定による扶養の義務
ホ イからニまでに掲げる義務に類する義務であって、契約に基づくもの
五  雇用関係に基づいて生じた使用人の請求権及び使用人の預り金の返還請求権
六  破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権(当該破産者について破産手続開始の決定があったことを知っていた者の有する請求権を除く。)
七  罰金等の請求権

ところで,生活保護の不正受給をした場合などには,生活保護法第78条に基づき,不正受給した保護費の返還を求められ,徴収されることになりますが,この徴収債権が,平成26年7月1日から施行されている生活保護法改正によって,非免責債権化されているので,注意が必要です。

改正された生活保護法第78条第4項において,

「前三項の規定による徴収金は、この法律に別段の定めがある場合を除き、国税徴収の例により徴収することができる。」

との定めが新設されました。

破産法第97条第4号では,

「国税徴収法 (昭和三十四年法律第百四十七号)又は国税徴収の例によって徴収することのできる請求権(以下「租税等の請求権」という。)(後略)」

として「租税等の請求権」の定義をおいています。上記の生活保護法改正による新設規定により,生活保護法第78条に基づく徴収債権が,「租税等の請求権」に該当することとなり,非免責債権となりました。

この点,破産法だけ見ていても気がつきにくいところですので,注意が必要です。

これまでは,破産手続が視野に入っているのであれば,生活保護費の返還を命じられる根拠が,生活保護法第63条に基づくものであっても,第78条に基づくものであっても,いずれにしても原則として免責債権であったため,それほど気に掛ける必要はなかったかもしれません。

しかし,今後は,生活保護法63条に基づく返還債権は破産手続において免責対象となる一方,同78条に基づく徴収債権は非免責債権となりますので,大きな違いが生じます。

本来生活保護法第63条に基づいて返還が命じられるべきケースで,同78条に基づく徴収の決定を受けたような場合は,積極的に審査請求を行って是正する必要があるといえます。

なお,生活保護に関する審査請求などについては,日弁連の委託援助事業を利用して,弁護士費用をまかなうことができます。

http://www.nichibenren.or.jp/activity/justice/houterasu/hourituenjyojigyou.html

(弁護士新谷泰真)


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2014年8月 1日 (金)

東京家裁での婚姻費用分担調停印紙郵券

★2014年8月1日現在

東京家庭裁判所に婚姻費用分担調停を申し立てる場合

必要な収入印紙額は1200円
予納郵券のセットは合計966円分
100 円×2枚,82円×8枚,10円×10枚,5円×2枚

配偶者が生活費を渡してくれない場合,婚姻費用の分担調停を裁判所に申し立てて,裁判所で協議を行うことができます。話し合いで条件が整わない場合は,審判手続に移行して,裁判所が支払いをするべき婚姻費用の金額を決めて,支払いを命じます。裁判所の審判には,強制力がありますので,支払いがない場合には強制執行手続をとることもできます。

婚姻費用は,別居している場合であっても請求できます。

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東京家裁での夫婦関係調整調停(離婚調停)印紙郵券

★2014年8月1日現在

東京家庭裁判所に夫婦関係調整(離婚)調停を申し立てる場合

必要な収入印紙額は1200円
予納郵券のセットは合計966円分
100 円×2枚,82円×8枚,10円×10枚,5円×2枚

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2014年7月18日 (金)

ホームロイヤー契約

最近、今は具体的なトラブルを抱えているわけではないが将来高齢になった時が心配なので諸々色々頼めるところはないだろうかという相談を複数受けました。最近は生前に本人から死後事務を引き受ける業者もあらわれているようですから関心・需要は多いのでしょう。

わたしはこのような相談を受けた場合にホームロイヤー契約というものがあることをご説明しています。これは法律家である弁護士にかかりつけ医のような立場で継続的に法的サービスを提供してもらう契約のことをいいます。具体的中身は様々ですが、高齢になった時に予想される課題やトラブルに対処するために財産管理を中心とした契約を結んでおく場合が多いように思います。

 高齢化率が高く、一方で少子化により支える側の若手が少なくなっている日本においては、多くの方が自らの老後に不安を持っています。認知症になった時にお金を管理できるだろうか、悪い人に財産を騙しとられたらどうしようか、身体を悪くした時に入院の手続きはどうしようか、介護が必要になった時に入居施設はどう決めたらいいだろうか、ひとりきりになってしまったらどうしよう、自分が亡くなった後の葬儀やお墓の問題はどうしようか、亡くなった後の自分の財産はどうなるのだろう・・・等々人生長ければその分悩みも増えていきます。そんな不安を少しでも解消するために法律家を活用することができるのです。

 例えば、認知症になった時の財産管理が不安であれば予め弁護士と任意後見契約を結び、自ら財産管理をすることができなくなった場合には任意後見人になってもらうということが考えられます。任意後見契約を締結するには公証役場で公正証書を作る必要がありますが、その際には公正証書遺言も一緒に作成して、任意後見人予定の弁護士を遺言執行者として指定しておく方も少なくありません。遺言執行者を予め定めておくことで、遺言内容をより確実に実現することができます。また、判断能力が低下する前から財産管理契約を締結し、大事な通帳や証書等を預かってもらい、常に相談できる関係を維持しておくこともあります。

さらに、死亡届、入院費等の清算、葬儀、納骨、遺留品の処理などの死後の事務まで委託する方もいます。自分の最後は自分の意思で決めておきたい、できる限り人の世話になりたくない、迷惑をかけたくないという気持ちを持つ方が増えているのだと思います。

 問題はそういうことを頼める人をどう探すかです。

おそらく「弁護士にお気軽にご相談ご依頼ください!」と言ってもそうたやすく以上のようなことを頼める人は多くいないはずです。自分の判断能力が低下した場合や亡くなった後のことに関してはもはや自分が監督するわけにいかないのですから、本当の意味で人として信頼できる人でなければなりません。1,2回の法律相談で信頼してもらえれば勿論よいですが、実際には簡単ではないでしょう。

そこで一度に全部を任せるのではなく、少しずつ色々なことを相談・依頼をし、臨機応変に修正変更していける関係を持つことから始めてみてはどうでしょうか。例えば、まだ元気であればとりあえず弁護士と法律顧問契約を結び、電話やメールで簡単な相談をできる弁護士を決めておく、定期的に面会をするなどして、ある程度信頼できると思えてきたところで遺言の作成を手伝ってもらう、さらに任意後見契約を結ぶ、今現在の財産管理をある程度委ねる、死後のことも委託するなどひとつひとつお願いごとを増やしていくというやり方です。勿論、信頼関係を維持できないと考えれば契約を解除すればよいのです。

また、遺言も最後の決断と思うとなかなか書けないものですが、少し気が変われば何度でも書き直せばよいのです。当然に日付の新しいものが有効になりますし、弁護士に形式面のチェックをしてもらって自筆遺言にしておけば、特段費用もかかりません。一般的には公正証書遺言がよいと言われていますが、自筆証書遺言も要件を充たせば立派に効果を発し得ます。

来るべき超高齢化社会に向けてぜひ上手に弁護士を利用して頂ければと思います。

(亀井真紀)


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2014年7月 1日 (火)

パワハラ・職場内いじめと自殺

 5月30日、厚生労働省が「平成25年度個別労働紛争解決制度施行状況」というプレスリリースを公表しました。
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10401000-Daijinkanbouchihouka-Chihouka/0000047216.pdf

この資料によると、民事上の個別労働紛争相談の内容は2年連続で「いじめ・嫌がらせ」が首位になっています。資料の助言・指導例を見ると、「いじめ・嫌がらせ」の中にはパワーハラスメントも含まれているようです。
「いじめ・嫌がらせ」の相談件数は平成14年度には6627件でしかありませんでしたが、その後一貫して増加し続け、平成25年度には5万9197件もの相談が寄せられています。この傾向を見る限り、「いじめ・嫌がらせ」を巡る紛争は今後とも増えて行くものと推測されます。

 いじめやパワーハラスメントの問題には行政も対策に乗り出しています。昨年9月27日には厚生労働省がパワーハラスメントの対策ハンドブックを作成しています(http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000024281.html)。

 ハンドブックでは、パワーハラスメントとして6つの類型を例示しています。①身体的な攻撃(暴行・傷害)、②精神的な攻撃(脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言)、③人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)、④過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害)、⑤過小な要求(職務上の合理性がなく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じる、仕事を与えない)、⑥個の侵害(私的なことに過度に立ち入る)などです。こうした行為は従来から刑事罰や不法行為に基づく損害賠償請求の対象とされてきましたが、厚生労働省が不適切な行為類型を明確にしたことは今後の行政指導や裁判実務における指針の一つとして被害者の救済に資するものとして評価できます。

 パワーハラスメントを巡っては、裁判所でも画期的な裁判例が出されるようになりつつあります。今年の1月15日に名古屋地方裁判所で言い渡された判決もその一つです(名古屋地判平26・1・15判時2216-109)。この判例はパワーハラスメントと自殺との因果関係を認め、企業に対し合計4600万円余りにも及ぶ賠償金を遺族らに支払うよう命じた事案です。一般にパワーハラスメントと自殺との因果関係が認められることは極めて珍しく、法曹実務家の注目を集めた事案です。

 この事例では、①ミスをした時に頭を叩く、②注意する時に「てめえ、何やってんだ」「どうしてくれるんだ。」「ばかやろう。」などと汚い言葉で罵る、③ミスをして会社に損害を与えた時に弁償するように求め、できないのであれば家族に弁償してもらうと言い放つ、④「会社を辞めたければ7000万円払え。払わないと辞めさせない。」などと言うなどの酷いパワーハラスメントが上司から加えられていました。また、⑤自殺一週間前には全治12日間を要するほどの暴行を加えられ、⑥自殺の3日前には「私…は会社に今までたくさんの物を壊してしまい損害を与えてしまいました。会社に利益を上げるどころか、逆に余分な出費を重ねてしまい迷惑をお掛けしたことを深く反省し、一族で誠意をもって返さいします。二ヶ月以内に返さいします。」「額は一千万~一億」などと記載された退職届まで書かされていました。

 これはパワーハラスメントが問題になる事例の中でも深刻なケースであると思いますが、ハラスメントに関する相談を受けていると、残念ながら本件と並ぶような扱いが見られる事例は決して珍しくありません。通常は自殺に至る前に勤務先を離れることになりますが、最悪の結果になった場合に残された遺族にとって本件のような裁判例が出されることは大きな意義があるのではないかと思います。

 パワーハラスメントは深刻化すれば従業員にとっても企業にとっても不幸な結果を招くことになります。従業員の方は時として命まで脅かされることになりますし、企業は社会的信用の失墜や人材採用の困難化など存続を揺るがす事態に陥りかねません。事後的な被害者の救済だけではなく、深刻な結果を未然に防ぐためにも、法律家はこの問題に積極的な役割を果たして行かなければなりません。

 企業としては、苦情・相談への対応や、研修の実施、パワーハラスメントを防止するための体制整備などで法律家を活用する余地があるだろうと思います。従業員の方としては、心身に不調をきたす前に職場に改善を申入れたり、円滑に退職したりするため、法律家を代理人に選任する意味があろうかと思います。

 職場のパワーハラスメントやいじめ等について問題をお抱えの方は、ぜひご相談ください。

(師子角允彬)


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